睡眠不足で抜け毛が増える理由とAGAとの見分け方|4つの改善策

睡眠不足で抜け毛が増える理由とAGAとの見分け方|4つの改善策
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記事監修:東京駅前院 院長 内田 一宝

1991年日本医科大学卒業。同大学病院での勤務を経て、2011年に医療法人社団大樹会理事長に就任しました。2026年より「新東京クリニック」の院長として、東京駅前・立川駅前で診療を行っています。 30年以上の臨床経験を活かし、患者様に寄り添った分かりやすい解説を心がけています。

枕元に落ちていた髪の量にふと目が留まり、慢性的な寝不足に心当たりがあるという方は少なくありません。睡眠と抜け毛にどんな結び付きがあるのか、はっきりした実感が持てないまま、不安だけが募っていくケースも見受けられます。仕事や家事に追われるうちに睡眠時間を削ってしまい、頭皮や毛髪への影響を気にかける余裕がなくなっていることもあるでしょう。本記事では、成長ホルモンやコルチゾールといった体内の働きを踏まえながら、一過性の抜け毛とAGAとの見分け方、日常生活に取り入れやすい睡眠改善の工夫、治療中に感じることがある変化への向き合い方まで、順を追ってまとめました。気になる項目から確認してみてください。

睡眠不足の基準とは?抜け毛予防に必要な睡眠時間の目安

最近よく眠れていないのに、抜け毛が増えた気がする。そう感じて、睡眠不足と抜け毛の関係を調べ始めた方は少なくないでしょう。まずは睡眠不足の目安と、抜け毛予防の観点から必要とされる睡眠時間について、公的な指針をもとに確認していきます。

一般的に6時間未満の睡眠が続く状態が睡眠不足の目安とされる

厚生労働省が公表している調査では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性でおよそ4割近くにのぼるとされています(※1)。医学的に「何時間未満なら睡眠不足」と一律に線引きできるわけではなく、必要な睡眠時間には個人差がありますが、6時間未満の睡眠が習慣的に続いている状態は、一般的に睡眠不足の目安として捉えられています。自分では気づきにくいことも多いため、日中の体調にあらわれるサインを手がかりにするとよいでしょう。

  • 強い眠気:日中に強い眠気が続く 
  • 集中力低下:仕事や作業でのミスや物忘れが増える 
  • 疲労感:十分に休んでも疲れが取れにくい 
  • 気分の落ち込み:理由もなくイライラしたり気分が沈んだりする

これらのサインが重なっている場合は、体が必要としている睡眠量を確保できていない可能性があるため、生活リズムを一度見直してみることをおすすめします。

※1 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

抜け毛予防には7〜8時間の睡眠時間が望ましいとされている

厚生労働省の睡眠に関する指針では、成人は6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが示されています(※1)。抜け毛予防や髪の健康という観点から考える場合は、6時間ぎりぎりではなく、やや長めの7〜8時間程度を確保することが望ましいと考えられています。これは、髪の成長を支える成長ホルモンが、入眠直後に訪れる深い眠りの時間帯に多く分泌されるとされているためです。睡眠時間そのものが短くなると、深い眠りをまとまって取れる機会も減ってしまう可能性があります。もっとも、必要な睡眠時間には年齢差・個人差が大きいため、時間の数字だけにこだわりすぎず、日中の眠気や体調を目安にしながら、自分に合った睡眠時間を見つけていくことが大切です。

※1 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(前掲)

睡眠時間の長さだけでなく深いノンレム睡眠が取れているかも重要な判断基準

抜け毛予防という観点では、単に長時間ベッドに入っていることよりも、深いノンレム睡眠がしっかり取れているかどうかが重要な判断基準になります。厚生労働省の睡眠ガイドでも、睡眠時間という量の確保に加えて、ぐっすり眠れたと実感できる睡眠休養感を高めることの重要性が示されています(※1)。就寝前のスマートフォンの使用、就寝直前の飲酒やカフェイン摂取、不規則な就寝時刻などは、寝つきを浅くし、深い眠りに入りにくくする要因になり得るとされています。長く寝ているつもりでも眠りが浅いと感じる方は、こうした生活習慣が眠りの質を妨げていないか、一度振り返ってみるとよいでしょう。

※1 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(前掲)

睡眠不足は本当に抜け毛の原因になる?成長ホルモンとコルチゾールの関係

睡眠不足がなぜ抜け毛につながるのか、疑問に思う方も多いはずです。ここでは、体内で起こるとされるホルモンや自律神経の変化と、頭皮への影響について解説します。

深いノンレム睡眠中に分泌される成長ホルモンが毛包の再生を支えている

髪の毛のもととなる毛包の新陳代謝には、成長ホルモンが関わっているとされています。成長ホルモンは主に入眠直後の深いノンレム睡眠の時間帯に多く分泌されるといわれており、毛包の修復や、髪の主成分であるタンパク質(ケラチン)の合成を支える働きがあると考えられています。睡眠不足によって深い眠りの時間が短くなると、こうしたホルモンの働きが十分に発揮されにくくなる可能性があります。もちろん、成長ホルモンの分泌量や睡眠の取り方には個人差があり、睡眠不足がすぐに抜け毛へ直結するとは限りませんが、慢性的に睡眠不足が続く場合は、頭皮や毛髪の状態にも何らかの影響が及ぶことが考えられます。

睡眠不足でコルチゾールが増えると毛周期が休止期へ早まる

睡眠不足は、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌にも影響を与えるとされています。コルチゾールが過剰に分泌された状態が続くと、髪が伸びる成長期から、成長を止めて抜け落ちを待つ休止期へと毛周期が早まりやすくなる可能性が指摘されています。これはいわゆる休止期脱毛と呼ばれる状態で、強いストレスや体調不良、環境の変化などをきっかけに、一時的に抜け毛が増える現象として知られています。睡眠不足はこうしたストレス反応の一因になり得るものの、抜け毛の原因はひとつに限られるわけではなく、複数の要因が重なって起こることも少なくない点には留意が必要です。

自律神経の乱れによる頭皮の血行不良も抜け毛を招く

睡眠不足は、血管の収縮・拡張をコントロールしている自律神経のバランスを乱す要因のひとつともされています。自律神経の働きが低下すると、頭皮の毛細血管の血流が滞りやすくなる可能性があり、毛根に必要な栄養や酸素が十分に行き届きにくくなることが考えられます。頭皮の血行不良が続くと、健康な髪が育ちにくい環境につながる可能性もあります。ただし、頭皮の血行には睡眠だけでなく、運動不足、冷え、喫煙、食生活の乱れなど生活習慣全体が関わっているため、睡眠だけを見直せば十分というわけではなく、総合的な生活習慣の見直しが望ましいといえるでしょう。

睡眠不足による抜け毛とAGAの見分け方

抜け毛が増えたとき、それが睡眠不足による一時的なものなのか、進行性のAGA(男性型脱毛症)によるものなのか、気になる方も多いでしょう。ここでは見分け方の一般的な目安を紹介します。

抜け方が均一で睡眠改善後に回復するのは休止期脱毛のサイン

睡眠不足など一時的な要因によって起こる休止期脱毛の場合、頭部の特定の場所に偏ることなく、全体からまんべんなく抜け毛が増える傾向があるとされています。原因となっていた睡眠不足やストレスが解消されれば、生活習慣の改善とともに数ヶ月かけて元の状態に近づいていくケースが多いといわれています。ただし、回復にかかる期間や程度には個人差があるため、あくまで一般的な目安として捉え、不安な場合は自己判断にとどめず相談することも検討してください。

生え際や頭頂部から進行し戻らないのはAGAに多い特徴

一方でAGAの場合は、生え際や頭頂部など特定の部位を中心に薄毛が進行し、放置すると徐々に範囲が広がっていく点が特徴とされています。AGAは男性ホルモンの働きが関与する進行性の脱毛であるため、睡眠を含む生活習慣を改善するだけでは、自然に回復することは期待しにくいとされています。生え際の後退や頭頂部のボリューム低下など、部位に偏った変化に気づいた段階で、早めに皮膚科やAGA専門クリニックへ相談することをおすすめします。

抜け毛の本数や続く期間で一時的な脱毛かAGAかを判断する目安

一般的に、健康な人であっても1日に50〜100本程度の抜け毛は自然な範囲とされています。季節の変わり目には一時的に本数が増えることもありますが、睡眠不足など一時的な要因による抜け毛は、原因となっていた状況が落ち着けば、数週間から数ヶ月ほどで本数も落ち着いていく傾向があるといわれています。一方で、抜け毛が増えた状態が長期間続いている、あるいは抜けた髪が細く弱々しくなってきたと感じる場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、皮膚科や専門クリニックに相談することが望ましいでしょう。

  • 抜け方:頭部全体で均一か、部位に偏りがあるか 
  • 期間:数週間程度で落ち着くか、長期間続くか 
  • 毛質:抜けた髪が細く短くなっていないか

睡眠を改善すれば抜け毛は治る?回復までの期間の目安

睡眠を見直すことで抜け毛はどの程度改善が期待できるのか、回復までの一般的な期間の目安について解説します。

休止期脱毛は原因を取り除けば数ヶ月で自然に回復しやすい

睡眠不足が主な原因となっている休止期脱毛の場合、睡眠習慣を改善し、原因となっていたストレスや生活の乱れを取り除くことで、数ヶ月かけて徐々に抜け毛が落ち着いていくことが期待できるとされています。髪には成長期・退行期・休止期という周期があり、休止期に入った毛が抜け落ちてから新しい髪が生えそろうまでには、一定の時間がかかります。そのため、睡眠を改善したからといってすぐに抜け毛が止まるわけではなく、数ヶ月単位で経過を見守る姿勢が大切です。

AGAが原因の場合は睡眠改善だけでは進行を止められない

抜け毛の背景にAGAがある場合は、睡眠習慣を整えるだけでは進行を止めることは難しいとされています。AGAは加齢や男性ホルモンの働きが関与する進行性の脱毛であり、生活習慣の改善は治療の土台として重要ではあるものの、それだけで進行を食い止めることは期待しにくいと考えられています。AGAの治療には、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬、ミノキシジル外用薬など、医師の診断のもとで選択される治療法が用いられます。抜け毛の原因にAGAが疑われる場合は、自己判断で様子を見るのではなく、早めに医師へ相談することをおすすめします。

改善の実感には数週間から数ヶ月かかることを踏まえて経過を見る

睡眠習慣を改善しても、その効果をすぐに実感できるわけではありません。一般的に、毛髪や頭皮の状態に変化を感じられるまでには数週間から数ヶ月程度かかるとされており、短期間で目に見える結果が出ないからといって過度に焦る必要はありません。睡眠だけでなく、食事のバランスや適度な運動、禁煙や節酒といった生活習慣とあわせて継続的に取り組むことが大切です。それでも改善が見られない、あるいは悪化していると感じる場合は、専門医への相談を検討しましょう。

睡眠の質を高めて抜け毛を防ぐためにできること

抜け毛予防のためには、睡眠時間を確保するだけでなく、眠りの質そのものを高める工夫も欠かせません。ここでは今日から取り組みやすい具体的な方法を紹介します。

就寝と起床の時刻を毎日そろえて体内時計を安定させる

毎日の就寝・起床時刻をできるだけ一定に保つことは、体内時計を安定させ、深い眠りに入りやすくするために有効とされています。休日に大きく生活リズムがずれてしまうと、平日との差によって体内時計が乱れ、かえって寝つきが悪くなることもあるとされています。厚生労働省の睡眠ガイドでも、寝だめのために休日の起床時刻が大きく遅れると体内時計が混乱し、健康を損なうおそれがあると指摘されています(※1)。休日でも起床時刻の差はできるだけ小さく(一般に2時間以内が目安といわれます)とどめるのが望ましいでしょう。まずは無理のない範囲で、起床時刻をそろえることから始めてみるとよいでしょう。

※1 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(前掲)

就寝90分前の入浴とスマホ断ちで深い眠りに入りやすくする

就寝のおよそ90分前までに入浴を済ませておくと、一時的に上昇した深部体温が就寝時にかけて緩やかに下がり、その体温変化にともなって寝つきやすくなるといわれています。また、就寝前にスマートフォンやパソコンの画面を見続けると、画面から発せられる光が脳を覚醒させやすく、深い眠りの妨げになる可能性があるため注意が必要です。

  • 入浴:就寝の90分ほど前を目安に済ませる 
  • 光対策:就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控える 
  • 室温・寝具:季節に応じて快適な寝室環境を整える

起床後の日光と軽い運動でホルモンバランスを整える

朝起きたらまずカーテンを開けて日光を浴びることは、体内時計をリセットし、夜の自然な眠気を引き出すために有効とされています。あわせて、日中に軽いウォーキングなどの有酸素運動を取り入れることで、全身の血行が促され、ホルモンバランスが整いやすくなり、結果として質の良い睡眠につながることが期待できます。こうした生活リズムを整える取り組みは、抜け毛予防だけにとどまらず、心身全体の健康維持にもつながる基本的な習慣といえるでしょう。

AGA治療中に睡眠の変化や抜け毛が続く場合の対処法

AGA治療を受けている方の中には、治療を始めてから睡眠の変化や抜け毛の継続に不安を感じる方もいます。ここでは、そうした場合の一般的な考え方と対処法を紹介します。

フィナステリド・デュタステリドが睡眠に影響する可能性がある

フィナステリドやデュタステリドといった内服薬の添付文書には、精神面の症状として気分の落ち込みなどが報告されている旨が記載されており(※1)、服用中に睡眠の変化を感じたと話す方も一部にいます。これらの症状とお薬との明確な因果関係が確立されているわけではありませんが、服用開始後に気分の落ち込みや睡眠の質の変化など気になる症状を感じた場合は、自己判断で服用を中止せず、処方を受けた医師に速やかに相談することが大切です。

※1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報検索 各製剤添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

ミノキシジル外用薬による寝つきの変化は塗布タイミングの調整で対処できる

ミノキシジル外用薬を就寝の直前に使用すると、頭皮への刺激感や独特のにおいなどから、寝つきに違和感を覚える方もいるとされています。こうした場合は、就寝の1時間ほど前までに塗布と乾燥を済ませておくなど、使用のタイミングを少し調整することで対処できる場合があります。使用方法や効果、副作用について不安がある場合は、自己判断で使用を中断せず、処方元の医師に相談しながら進めることをおすすめします。

改善策を試しても抜け毛が続く場合はマイクロスコープでの頭皮チェックも含め担当医に相談する

睡眠習慣の見直しや治療薬の使用を続けても、抜け毛の改善が感じられない、あるいはかえって気になる変化があるという場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、担当医に相談することが重要です。クリニックによっては、マイクロスコープを用いて頭皮や毛穴、毛根の状態を詳しく確認できる場合があり、抜け毛の原因や現在の治療効果をより客観的に把握するための手がかりになります。気になる変化があれば早めに相談し、必要に応じて治療方針の見直しを検討することが望ましいでしょう。

まとめ|睡眠習慣を見直しても抜け毛が続くなら早めの相談を

睡眠不足は、成長ホルモンの分泌不足やコルチゾールの増加、自律神経の乱れなどを介して、抜け毛の一因になり得ると考えられています。まずは6〜8時間程度の睡眠時間を目安にしながら、就寝・起床時刻をそろえたり、入浴やスマートフォンの使い方を見直したりすることで、眠りの質そのものを高める工夫から始めてみましょう。原因が一時的な睡眠不足であれば、生活習慣の改善とともに数ヶ月かけて抜け毛が落ち着いていくことが期待できます。一方で、生え際や頭頂部を中心に薄毛が進行している場合や、生活習慣を見直しても抜け毛が続く場合には、AGAなど別の原因が関わっている可能性も考えられます。抜け毛の状態には個人差が大きく、原因を自己判断で見極めることは難しいため、不安を感じる場合は早めに医師の診断を受け、必要に応じた治療を検討することをおすすめします。